2026年2月、ReDesignerは中途デザイナー採用に課題を感じる採用担当者の方々に向けて、オンラインセミナー「なぜ、企業が伝える魅力や条件はデザイナーに響かないのか?」を開催しました。
「優秀なデザイナーに応募してもらいたい」「内定を出しても辞退されてしまう」──こうした声は、デザイナー採用の現場で日常的に聞かれるものです。その背景には、企業側が「魅力」だと思って伝えている情報が、デザイナーにとっては「判断材料にならない」というミスマッチが存在しています。
本セミナーでは、デザイナー322名への調査をまとめた「Career Trend Report」のデータをもとに、デザイナーが転職時に本当に見ているポイントや、選考中に意欲が下がる瞬間などを解説。データに基づいた具体的なアクションを紹介しました。今回はそのイベントレポートをお届けします。
データで見る、デザイナー転職のリアル
転職の「きっかけ」と「決断理由」は違う
Career Trend Reportの結果を見ると、転職のきっかけとして最も多いのは「スキルアップ」です。しかし、ここで重要なのは、きっかけと決断理由は別物だという点です。

現職で最も実現したいことの第1優先を見ると、全年代で「給与・待遇を上げたい」が1位となっていました。つまり、考え始める理由は「成長」、決断する理由は「条件」。この2つはセットで考える必要があります。成長の話だけでは最後の決め手にはなりませんし、「給与・待遇を上げたい」という言葉も額面通りとは限りません。デザイナーとしての価値や期待を含めて、現在の業務との乖離が起こることで、給与・待遇への不満として表れてくるのです。
転職で年収アップは「当たり前」になりつつある
直近の転職者のうち70.3%が年収アップを実現しています。さらに、そのうちの半数以上が100万円以上の年収アップとなっており、これは一部のハイレイヤー層に限った話ではありません。
年代別に見ると、40歳を境に年収のボリュームゾーンが急上昇しており、45歳から49歳では約半数が年収800万円以上になるというデータもあります。また、年収のボリュームゾーンが最も低いのはフリーランス、年収600万円以上の割合が最も多いのは事業会社でした。
デザイナーの転職市場では、すでに一部の領域で「転職=年収が上がるもの」という前提が共有されつつあります。その前提に立った上で、求人の書き方や転職希望者へのコミュニケーションを意識する必要が出てきます。
年収アップした人でも、77%が転職活動中に不安を感じている
年収を上げることができたデザイナーでも、転職活動中は77%の方が不安を感じながら活動していました。注目すべきは、その不安の多くが「スキル」ではなく「環境」に関するものだったことです。

具体的に多かった声としては、組織とのカルチャーフィットへの不安、未経験の業界への転職に対する不安、社内でデザインチームやデザインそのものがどう扱われているのか見えにくかったこと、そして評価が正しくなされているかどうかという点が挙げられました。
ここで重要なのは、これらの不安は企業側が積極的に情報を開示し、適切にデザイナーに伝えることができれば払拭できるものが多いという点です。
デザイナーはどこから情報を集めているのか
年代が上がるほど、ホームページに加えてnote記事やブログ、カジュアル面談といった一次情報を重視する傾向が見られました。求人票はある種「理想」が書かれているものとして読み解いている候補者も多く、だからこそ実際に働く人、社内の人間の声が重視されています。
レポート内の「働いてみたいと思う会社を選んだ理由」という設問でも、「セミナーや記事の発信を通してデザイン組織が強固であると感じた」「代表が積極的にnote記事で発信している」「ポッドキャストを聞いてその企業に勤める方々に好印象を抱いた」といった声が多く挙がりました。
カジュアル面談では、外部に発信しているnote記事などの情報に対しての実態・実情を踏まえて伝えることが重要であり、そこでのコミュニケーションが選考前のアトラクトポイントになってきます。
デザイナーが「ここで働きたい」と思う企業の共通点
働きたいと思う企業には共通点があります。それは「デザインへの尊重」と「上流工程への関与」です。ここで言う「尊重」とは、気持ちの話だけではありません。デザイナーが意思決定の場にいるかどうか、戦略から関われるかどうか、経営層がデザインを語れるかどうかそうした組織のカルチャー・構造の問題です。

ここにギャップが生まれたときに「給与・待遇が見合わない」「スキルが身につかない」といった不安につながっていきます。デザインに注力しているスタンスを見せることが大事であり、ReDesignerの求人票でも「デザインへの取り組み」という項目を設け、会社におけるデザインの考え方やデザイナーへの評価方法、キャリアパスなどを記載できるようにしています。
明日から実践できる3つのアクション
採用担当者が押さえておくべきポイントを3つにまとめます。
1. 報酬設計を市場基準で見直す
一定の領域では年収を上げることが前提で動いている候補者も多いため、市場感に沿った給与体系を改めて確認することが重要です。もちろん年収を上げることは簡単な話ではありませんが、相場と大きな乖離がないかを確認することがポイントです。ただし、年収に関しては次の2つ目・3つ目のポイントとセットで考える必要があります。
2. デザインに対するスタンスを明示する
デザインに対する姿勢を説明できるようにすることが重要です。デザイナーは、組織内におけるデザイナーの扱われ方やプロダクトへの貢献度をとても重視しています。組織図はどう構成されて誰と働くのか、デザインの意思決定はどんなプロセスで行われるのか──これらがデザイナーからよく見られているポイントです。人事・現場・候補者が連携して、デザインを尊重する文化を発信し続けることが求められます。
3. 面接を「見極めの場」から「情報開示の場」へ
求人票は理想的な内容が中心になりやすく、求職者もその前提で捉えているケースが少なくありません。そのため、面接では実情を踏まえた情報開示が不可欠です。
特にデザインに対する期待値は、面接官ごとに認識が異なることも多く、伝え方にばらつきが生まれやすい領域です。採用サイドと現場サイドであらかじめ言語化を行い、誰が話しても一貫した説明ができる状態を整えておくことが重要です。
デザイナーは面接を「選考される場」としてだけでなく、「ここで働く自分を具体的にイメージする場」として捉えています。その前提に立ったコミュニケーションが、採用成功に直結します。
まとめ
デザイナー採用において企業が伝えるべき「魅力」は、給与や福利厚生といった条件面だけでは不十分です。デザイナーが本当に知りたいのは、その企業がデザインをどう位置づけ、デザイナーにどんな役割と期待を持っているのか。そしてその言葉が、組織の実態と一致しているかどうかです。
報酬体系と共に、デザインに対するスタンスを明示し、面接の場を「情報開示」の機会と「対話の場」へと転換する。この3つの視点を実践することが、デザイナーから「選ばれる企業」への第一歩になるはずです。
ReDesignerでは今後もデザイナー採用に関するセミナーを定期的に開催していきます。採用に課題を感じている方、まずは壁打ち相手として相談したいという方も、お気軽にお問い合わせください。

